vol.3「スタンス」

前回は「知的基礎力」がサッカー選手としての能力を高める上で重要であることをついて触れた。今回は「スタンス」について話をしたい。「スタンス」とは端的にいうと価値観のことである。プロとして選手を継続する上で、他者から評価される価値観を持っているか、継続的にセルフモチベートし自身を高めてゆくことに重きを置いているか等の自分自身の行動指針、基準のことを指す。サッカーからだけでなく、学校教育、家庭教育からも大きな影響を受け、社会に出る前にある程度定まってしまっている要素でもある。

 

「スタンス」を考えるときに、優れている、劣っているとう評価を行うことは適切ではない。あくまで、個人価値観の傾向であり、肝要なのは他者(あるいは所属する組織の価値観)との差異を知ることにある。自分自身がどういった価値観を持っている人間なのかを知り、所属する組織(構成員)はどういった価値観を重視するかを知ることが重要である。そして、その2者間において何が共有できて、何が共有できていないのかを知る必要がある。場合によっては、自身の価値観の転換が必要なこともあるだろう。あるいは、価値観を変えられないのであれば、違う組織に所属を変えることも必要かもしれない。

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例えば、個人と組織の「スタンス」の不一致により、ありがちなケースを紹介する。高校時代に強豪チームに所属していた選手が、「高校のときはこうだった」とか、「高校の監督の考え方と違う」とかいう理由で、過去に引きずられ、今のチームの方針を受け入れない、自分が親しんだプレーしかしない、できないといったケースだ。確かに高校時代は優れたプレーヤーだったかもしれないが、新しいチームで評価されずに、出場機会を減らしてゆく典型的なパターンだ。皆さんの周りにもこういった人物に心当たりはないだろうか。実はこれは高校から大学に上がるタイミングだけに起こることではなく、プロになってからも起こる現象だ。プロの世界では移籍することが多いし、それに伴い一緒に働く監督、選手も頻繁に変わることが多い。早期に自分と他者との価値観の差異を認識し、変化を起こす必要がある。

 

30歳を超えてプレーできる選手の多くは自分の「スタンス」を把握する能力、他者のスタンスを把握する能力に長けている。そして、必要に応じて自身の「スタンス」を変化させられる柔軟性も持ちあわせている。

 

「スタンス」に関しては、社会に出る前にある程度決定づけられており、歳を取ればとるほど変化させることが難しい。社会に出る前に多様な価値観に触れ、多様性を受け取れる感性と柔軟性を身に着けることが重要だ。

 

皆さんは学生生活で多様な価値観に触れて、「スタンス」を意識できているだろうか。

 

神田義輝

人材紹介、人材派遣ビジネスに従事。株式会社リクルートエージェントで転職の支援や、日本プロサッカーリーグにて、Jリーグ選手へのキャリア教育、セカンドキャリアのサポートを経験。独立後はJリーグ、オリンピック委員会、リクルートキャリア等でアスリートのキャリア支援事業に従事。現在は株式会社山愛にてアスリートのキャリア支援事業責任者として勤務。